空飛ぶタイヤ

WOWWOWで放映中のドラマ「空飛ぶタイヤ」の原作を読みました。「個人 vs. 組織」「理不尽 vs. 道理」の物語が描かれている。

空飛ぶタイヤ (Jノベル・コレクション) (単行本)
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「空飛ぶタイヤ」は赤松運送のトラックが走行中に脱輪し、外れたタイヤが親子連れの母親に直撃し死亡事故が発生するところから始まる。トラックのメーカーであるホープ自動車は整備不良と結論付けた調査報告書を出す。家宅捜査を受ける赤松運送に対して、追い討ちをかけるように大口顧客からの取引停止、取引銀行からの貸しはがしの処置があり中小運送会社の赤松運送は絶体絶命となる。二代目社長の赤松は整備担当者の門田の基準より厳しい整備を行っている整備記録を見て、自社の整備不良ではないことを確信して大企業のホープ自動車に戦いを挑んでいく。

赤松 vs. ホープ自動車

普通に考えると大企業の組織力に個人の力では対抗できない。「長い物には巻かれよ」式で大組織が理不尽なことをしても、その圧倒的な組織力の前には「まっ、いいか」で私なら下を向いてこそこそと逃げ出してしまう。しかし、家族や従業員を抱えた赤松には、逃げ場がなく、否応なく戦うしかなくなる。

戦いの糸口は、整備不良と断じた調査報告書の開示。ホープ自動車から断られた次の糸口は問題のハブの返還要求。ハブを独自に調査しようという思惑。ホープ自動車は屁理屈をつけて返還に応じない。訴訟に持ち込む赤松に対して持久戦で兵糧攻めにするホープ自動車。

赤松とホープ自動車との戦いの裏で、別の男たちの戦いが勃発していた。

沢田 vs. 狩野常務

赤松のクレームに対応するホープ自動車側の課長の沢田は品質保証の室井の動きに不審を抱く。そして組織ぐるみの「クレーム隠し」という事実に気付く。沢田は自分の夢である商品開発部門への異動するネタとして、社内主流派の品質保証部門出身の狩野常務に打撃を与える材料として策を練りだす。

品質保証部門へ探りを入れて、出席者などを割り出すことに成功する。そして、社長へのクレーム隠しの報告書を上司の承認のもと提出するが、狩野常務から商品開発部門への異動を手打ちと引き換えに受け入れる。永年の夢だった商品開発部門だが、そこでの仕事はつまらない仕事しかさせてもらえない塩漬け状態。新商品企画の社内コンペに応募するが、何も内容を見もせずに落選という憂き目にあい沢田はある決意をする。

井関 vs. ホープ自動車支援派

ホープ銀行でホープ自動車を担当する井関は200億のクレジットラインの設定に難色を示していた。数字の根拠のない事業計画を出しながら、ホープという名前を持つホープ自動車にホープ銀行は融資をして当然という態度。

国内与信担当役員でホープ自動車支援派である巻田専務からはクレジットラインを設定する稟議書を早く上げるように指示されていた。しかし、バンカーとして冷静に分析すれば、とても融資できるレベルの事業計画ではない。井関は上司を巻き込み融資を断る方向で動き始める。

そして、クレーム隠しのことが露見して、ホープ自動車は危地に追い込まれ2000億円の融資をグループ会社に申し込む。50%をホープ重工、残りを商事と銀行が半々で協調融資するスキームをホープ自動車の狩野常務は提案してくる。しかし、重工が首を縦に振らない。銀行も重工の分まで負担できない。そこで、銀行が提案した救済策とは。

男達の戦い

赤松の戦い方は筋を通した戦い。自分に非がないことを確信して、理不尽なことに対して戦う。最後に勝利するが幸運に助けられている。これを所詮はお話しだからと読むのか、世の中のためにもなる戦い故に天が味方したと読むかはあなた次第。私は後者です。

沢田の戦い方は中途半端でかなり私利私欲が入っている。でも、自分が沢田の立場ならもっと卑怯なことをするかもという思いもある。沢田のミスは狩野派の人事からポストを提示されたときに異動先の部署だけでOKを決めたこと。ポジションと役割、部下なども含めて握らなくては。

井関の戦い方が一番効率的でクレバーな戦い方として描かれている。「空飛ぶタイヤ」において語られる井関の価値観はバンカーとしての職務を全うすること。そのためには友人で記者の榎本(小説では男性)をうまく利用したりもする。

その他の戦いとしては赤松がPTA会長を務めている小学校で、脱輪事故により息子への嫌がらせ、会長追い落としも展開して家族が理不尽な目に会うことも描いている。こちらの方が陰湿でえげつない理不尽な責められ方をしていて読んでいて無性に腹が立ちました。でも、長男の拓郎が盗みの疑惑を晴らすためにクラスメートと戦う姿は救われる思いがした。

最初はこの学校を巡るごたごたは赤松のホープ自動車の戦いの足を引っ張っていたが途中から元気をもらったりしているようになってプラスの影響を与えている。何事もあきらめずに動けということか。

「空飛ぶタイヤ」は一気に読んでしまいました。理不尽なことに対する戦い方を考えさせてくれる面白い小説です。

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