ガリレオの苦悩を読了しました。
今回、2冊同時刊行のうちの短編集の方です。「ガリレオの苦悩」からテレビドラマ「ガリレオ・シリーズ」のオリジナル・キャラであった内海薫が小説にも登場しました。柴咲コウのあのキャンキャンした声が文章から聞こえてこないかと心配でしたが、ガリレオの苦悩の内海薫は幸いにも抑えたトーンの話ぶりです。
最初の2つの章がテレビで放映されたガリレオφの原作となっていますのでテレビと比較しながら読むのも一興です。
以下、ネタバレ
第一章 落下る (おちる)
ガリレオφでは大学生時代の草薙がピザの配達のバイトをしていて、たまたま落下した女性のところへ届けに行ったのが原因で犯人と間違われる。その疑いを晴らすために湯川に依頼するという話でした。「ガリレオの苦悩」では内海薫が初めて湯川と出会う話として書かれています。
事件は自殺として扱われようとするところを内海の女性ならではの視点
- 宅配便で届けられた下着が梱包されたまま玄関に置いたままなのは男性を部屋をあげたことから不自然
女性ならではの細かい点の気づき
- キャッシュカードの暗証番号の変更
女性ならではの執念深さ
- 自ら実験。さらに実験成功率の低さは隠して警察幹部へ説明
といったことが描かれています。小説では初めての内海の登場なので内海のキャラクターを説明した作品でもあります。
第二章 操縦る (あやつる)
ガリレオφのメインのお話の原作。「ガリレオの苦悩」では犯人である友永は湯川の恩師であるという設定が違っていて、事件当日の友永の自宅での飲み会にも湯川は誘われていた。しかし、遅れて到着したために事件そのものは目撃していない。
もちろん、草薙と湯川が近くの浜辺でビーチバレーを楽しんだという記述はなく、友永の自宅は都内某所となっている。
友永が湯川の恩師だったという設定がラストのシーンをより涙を誘うものになっている。
第三章 密室る (とじる)
湯川が大学生時代のバトミントン部の友人の藤村に呼ばれてペンションへ赴き謎解きをする。草薙も内海も直接は登場せずに湯川と藤村で話は進む。
呼んだ藤村の期待以上の謎解きを進めてしまう湯川に藤村は驚きやめさせようとするが・・・。
ホログラムが小道具として使われているが、さりげない使われ方。むしろ、湯川の藤村に対する心配りが優しい感じの作品に仕上がっている。
第四章 指標す (しめす)
ダウジングがテーマとなっている。湯川がダウジングのことを非科学的の一言で排除せずに反証不可能という言葉で完全否定していないところが実に面白い。
書き下ろしの作品で、短めです。
第五章 撹乱す (みだす)
湯川が「悪魔の手」と称するものから挑戦を受けて立ち向かう話。
人の平衡感覚を狂わせる物とインターネットの掲示板を利用した犯罪を描いている。
なるほどね! そうすると蓋然性のある事柄をあちこちの掲示板に書きまくって、当たった事柄については、ほれほれ、この通り予言を実はしていたのだよと発表すると予言者になれるかな?まあ、地震が起きた後に実は地震雲や動物の変な行動を観察していたというのと似たようなもの。
もう一つ、内海薫のキャラの説明を草薙から聞いた物として湯川が
- 女性特有の直感力
- 女性特有の観察力
- 女性特有の頑固さ
- 女性特有の執念深さ
- 女性特有の冷淡さ
と語って内海を辟易させています。湯川にしてみれば事実を伝えているだけということでしょうが。
テレビドラマのガリレオ・シリーズの新しいのしてくれないでしょうかね?
コメント
『ガリレオの苦悩』 東野圭吾
<探偵ガリレオ>シリーズの最新刊ですが、同時に2冊発売という、ファンにとっては嬉しいような困っちゃうような商品戦略になっておりますな。続けて新作が読めるのは嬉しくても、ハードカバー2冊分の出費を強いられるというのはなかなか辛いものがあります。
どうせなら半年、は長いですけど2~3ヶ月くらい間を空けてくれた方が楽しみも持続するというものです。が、それはそれで贅沢な悩みなんでしょうね。
同時刊行のもう一冊『聖女の救済』は長編作品ですが、こちらは短編集という具合に棲み分けというか色分けはなされています。
収録されているのは「落下る(おちる)」、「操縦る(あやつる)」、「密室る(とじる…
読書メモ(本) 『ガリレオの苦悩』
東野圭吾の最新刊『ガリレオの苦悩』を読みました。『落下る(おちる)』『操縦る(あやつる)』『密室る(とじる)』『指標す(しめす)』『攪乱す(みだす)』が収録されています。短編には短編の良さがあるなぁと思います。ほとんど同時並行で『聖女の救済』も読んでいたのですが、長い物語と言うのは、謎解きを最後までぐいぐいひっぱっていくものだけど、それが好きじゃない人にとってはとても気持ち悪いだろうなぁ。僕はそういうのが好きだから長編がいいなぁと思うのだけど。