タイトル:コスタ・コンコルディア 工作艦明石の孤独・外伝
著者:林 譲治
10巻くらい行くだろうと思っていた「工作艦明石の孤独」シリーズが4巻で終わってしまって、ちょっと寂しいと思っていたら外伝が出ていたので読みました。
「コスタ・コンコルディア」の出だしは「司政官」
地球からの植民ということで開発初期には弁務官が置かれて植民星系の自治政府よりも上位(多分)の権限を持ちサポートするという世界観。
すぐに思い浮かんだのは眉村卓によるSF小説のシリーズ「司政官」でした。「コスタ・コンコルディア」で「司政官」との連想を強めたのは現地が揉めた時の解決を図る役目の「調停官」の方でした。
巡洋艦という圧倒的な暴力装置と優れたAIが登場することから連想を強めました。AIのジャンヌのことを「司政官」シリースで登場するロボット官僚 SQ1が脳裏に浮かびました。AIのジャンヌはそれほどフォーカスは当たっていませんでしたが。
「コスタ・コンコルディア」のテーマは民族問題?
民族問題?とハテナを付けているのは異文化衝突がテーマかもとも思っているからでした。
先住の知的生命体と思われていたビチマが実は3000年前にワープ事故で遭難した人類の末裔だったということが判明。判明する前は奴隷のような扱いを受け。判明後は人権回復されるものの差別されている構造は残っている状況。
ビチマは起源は人類といえども3000年間孤立していたので独自の言語や文化を持っている。ある意味では異星人と言っても良い。
つまり、植民星系では入植者とビチマという2つの民族を内含するという構造となる。
民族問題の解決は?
ビチマが人類だと判明しても入植者は石器時代に退化した人類だから奴隷のように扱ってもいいという雰囲気がある。
そこに、調停官が介入してビチマが入植者がやってきた時代でも優れた文化と知識を継承していたことを解き明かすことにより入植者の先入観を打ち壊し社会的なインパクトを与える。
物語としてはここくらいまでで、植民性の今後の社会がどのようになるかは明るい感じを思わせつつ終わります。
もっと読みたかったこと
ビチマの歴史的人物である女王やその弟、その挑戦者が遺跡調査で明らかとなりますが、少しだけ語られる彼らの物語がとても面白そう。
ワープ事故で過去に飛ばされ遭難してからの過酷な環境を生き抜いてくストーリーというのがそそられますが触りだけしか語られていなので残念です。過去と未来のお話を並列的に語っていくスタイルもありかなと思いました。
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