ファン・ジニ 第9話「雨の別れ」

今回のファン・ジニは「愛の弔い」

雨の中をウノの棺を運ぶ車が教坊の前でぴたりと止まってしまいます。雨に打たれた棺にそっと手を当てて、チニは亡きウノに語りかけます。

「寒さが苦手でしたよね。雨に濡れるとよく鼻声になってましたよね。たった一人で旅に出るのにこんなに雨に打たれて・・・・・」

温めてあげようとチョゴリをかけてあげるチニ。

「これでもう大丈夫少しは暖かいはず。そうでしょ。ここに長くいてはいけない。ここにいても寒いだけ。もう忘れて。私たちへの残酷な仕打ちは何もかも全部・・・全部忘れて。安らかに眠って。心配はいらない。私も・・・私も忘れる。もう二度と思い出したりしない。だから逝って。ここに心を残さずに逝って」

チニの悲しい恋の結末に翌朝、教坊のみんなはストライキを起こします。愛への弔いのために。

竹の絵と詩を燃やすチニのそばにペンム行首がやってきます。

「初恋でした。そして、最後の恋です。もう誰にも誰であろうと決して、この心は渡しません」「キーセン」「キーセンとして生きていきます」「女ではなくキーセンとして生きていきます」「どんな男でも抱きしめて見せます」「心がなければ難しいことではないでしょう」

「そして、仇をうちます」

「そして、・・・・行首様にも仇をうちます」

ウノとの思い出がつまった「玄月亭」にて、チニは半月のもとで詩を詠みます。

誰断崑崙玉　裁成織女梳　牽牛離別後　愁擲碧空虚

これで女を捨てキーセンとして生きていく決意をしたのでした。

後半はハ・ジウォンの演技のうまさで、一気呵成にみせたシーンでした。うちの奥さんも普段観ていないのに、ここのシーンでは真剣に観ていました。

edit

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チニの壮絶な初恋への決別とキーセンとして生きる決意がひしひしと伝わってきた後半でしたが、前半のウノのあの弱腰ぶりはいけません。男はみんなあんなものだと思われてしまうじゃありませんか。もちろん、大半の男は私も含めてウノよりももっと弱腰ですが。ははははは。

でもね、ウノがここでもっと体当たりで父親に挑んでいれば後半のチニのあのシーンは1024倍にも輝いたのにと思うと残念です。少年にとって父親とは越えるべき存在なのですから。越えたときが本当に少年から大人になるとき。そういう意味からはウノは大人になれなかった少年です。

剣をウノが持たされたときに、実の父親に剣を向けることはできないとウノは思ったのでしょう。だから、ここではウノは父親に対して、チニを譲るか自分を勘当するかのどちらかを選べと迫ればよい。チニを譲ってくれれば、それでよし。勘当されれば晴れて剣を向けることができる。そこで、玉砕覚悟で戦いを挑めばひょっとしたら父親はあきらめるかわざと負けてくれるかもしれない。

結局、ウノは青臭い書生であり、自分を苛めることしかできなかった。他者あるいは社会に対して戦いを挑むことはできなかった弱虫。死ぬことでしか自分の戦いを終えることができなかった。なぜ、始めたのだろうなんてアホくさいことを言うくらいなら戦えよといいたかった。外に対して戦いを挑めなかったので、結局は内向き=自分自身と戦うしかなく、結果的に死んでしまった。

一方のチニは自分の中の女を殺し、キーセンを誕生させた。今後のチニのキーセンとしての行動に期待したい。